一途な執事と甘いティータイム



よくよく見れば、チェーンに繋がれた南京錠に細かな傷がついていた。



幼い私の力では開かない重たいドア。



男の子がギィーッと音を立ててそのドアを開いた。



「んん、眩しいっ」



薄暗い部屋に差し込んでくる陽の光。



ドアの向こうにはまた階段が繋がっていて、その奥に光が見えた。



「あ、お外だ!!お兄ちゃん、お外に出られるよ!」



「そうみたいだね、行こうか菓乃ちゃん」



「うん!」



───私の記憶はここまで。



そのあとは何となく、お兄ちゃんと遊ぶのが楽しかったなっていう思い出だけ。



確かそのあとお兄ちゃんが元の場所へと帰してくれたんだけど、そこでお父さんに見つかって、ここは入っちゃいけない場所だと怒られたんだっけ。



そんなことを今思い出す。



こんな遠い昔の記憶だけど、あの扉のある部屋へと行けるだろうか。



きっと高校生になった今の私ならあの重そうなドアも開けられるはず。



そこまで行ければ外に出られる。



見つからないよう、記憶を頼りに豪邸の中を駆け抜けた。


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