一途な執事と甘いティータイム



「はぁ、はぁ……」



た、確かあのお兄ちゃんに会ったのはこの廊下のはず……



この床といい、壁紙といい何となく見覚えがある。



この後は角を右に曲がって、その先を左に。



私が幼い頃に迷い込んだここは、きっと大河家の住居スペース。



今はパーティー会場にいるから会うことはないかと思うけど、ここに仕える人にばったりと出会ってしまうかもしれない。



そしたらこの計画は終わり。



特に曲がり角は慎重に確認しながら進む。



「あっ、あの階段……!」



地下へと続く薄暗い階段。



あの時と変わらないけれど、あの日とは違って今日はひとり。



ひとりぼっちで降りていくには少し怖い階段だった。



ここまで来たら、きっと誰にも会わないだろう。



走ってきたせいで上がっていた息を整えながらゆっくり足を進める。



その先に見えてきた、あの日と変わらないドア。



ううん、少しホコリが被ってあの日より確実に古びている。



ドアの前に立って一度深呼吸をしてからドアの取っ手を握り、引いてみた。


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