一途な執事と甘いティータイム
秘密の扉だと言われたドアが目につく。
あの時と違ってチェーンはバラバラになって解けていた。
まるでここから脱走をはかったかのように。
もしかしてあのお兄ちゃん?
お兄ちゃんもここから逃げたんだろうか。
このドアの向こうへ行けば、お兄ちゃんにまた会えるだろうか。
「うんんっ……」
高校生になった今でも、このドアは重かった。
自分の体重を乗せるようにしてやっと開いたドア。
あの日と同じ、眩しい光が見える。
よし、早く出よう。
ここから出れば脱走成功だ。
なんだか嬉しくなって、さっきまでの疲れなんて忘れて階段を駆け上がる。
「やった!大成功!!」
階段の先は大河グループの豪邸の裏。
目の前に広がる茂みの中を潜り抜ければ敷地の外へ出られる。
後ろからの追っ手は来ない。
作戦は大成功。
喜びに満ち溢れて、スキップをしながら茂みを抜けた。
これで自由。
そう確信した時だった。