明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
しかし東京にいるとすぐに捕まると思った私は、横須賀を目指すことにした。
縁もゆかりもないが、黒木家が造船業を営み横須賀に拠点を持っていると耳にしたことがあるので、なんとなく魅かれたのだ。
造船業に関わってはいない信吾さんは、おそらく訪れることはない。
けれども、少しでも近くに感じることができれば。
駅に降り立つと、潮の香が鼻をくすぐる。
東京からほんの少し離れただけなのに、心細さからか異国に来た気すらした。
「頑張らなくては」
お腹にそっと手を当てつぶやく。
私が不安ではこの子はもっと不安だ。
とにかく仕事を探さなくてはと街をフラフラと歩いていると、【横須賀鎮守府(ちんじゅふ)職員募集】という張り紙を見つけた。
「鎮守府って海軍の……」
ということはやはり男性の募集だろうか。
そんなことを考えていると、目の前を軍服姿の男性が歩いていく。
「すみません」
私はとっさに声をかけた。