明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「八重さま、本当によかった。ですが、これからが心配です。どうにもならなくなったらどうか黒木さんを頼ってください。あんなふうに乗り込んでこられて……仕事も家も捨てるお覚悟があるはずです」
「ありがとう。そうするわ」
『私は彼の仇なの』とはどうしても言えず、笑顔でうなずいた。
「ここまでしかお手伝いできずすみません」
声をかけてくれる彼女の想い人は、とても優しい男性だった。
「とんでもない。本当にありがとう。てるをよろしくね」
うしろ髪を引かれる思いでてると別れた私は、あてもなくさまよい歩いた。
電車で遠くまで逃げようとも思ったが、遠方までの切符を買うお金もままならない。
しかもてるが、『あまり田舎に行くと仕事がないかもしれません。それに、よそ者が来たとすぐに知られる可能性もあります』と耳打ちしてくれたので、さほど遠くには行かないつもりだ。