明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

「それは悪かった。最近、小銭稼ぎに軍人相手にそういうことをする女がいてね。あの手この手で近づいてくるんだ。てっきりそうかと」


男は私をじっと見てから、再び口を開く。


「本当に仕事を探しているのか?」
「そうだと言っています」


怒りのあまり強い口調になってしまった。


「そんなに怒るな。紹介してやるから」
「本当ですか?」


佐木(さぎ)と名乗った男は、驚くことに軍医だった。


「三月に開設する海軍工廠職工共済会(かいぐんこうしょうしょっこうきょうさいかい)医院で働ける者を募集している。看護婦の補助をするんだが、やるか?」
「やります。お願いします!」


と弾んだ声で答えたが、言っておかなければ。

私は正座をしてから口を開く。


「実は……子を身ごもっています。ですから産むまでの間、お願いできるとありがたいのですが」
「子を?」


あんぐり口を開ける佐木さんは、「それはなおさら悪いことをした」ともう一度謝罪の言葉を繰り返す。

どうやら悪い人ではなさそうだ。
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