明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
そして、私はとうとう男の子を産み落とした。
信吾さんとの間に宿った新しい命を無事に誕生させられたという感激で涙がこぼれた。
佐木さんは、事情を詳しく尋ねてくることはないが心配してくれて、「俺が一緒に育ててやるから心配するな」と力強い言葉までもらえて、心強い。
彼は奥さまとの間に子を望んだが、奥さまが病弱で叶わなかったようだ。
それもあり、我が子の誕生のように喜んでくれた。
気温が下がってきた頃の出産で風邪をひき、おまけに難産だったこともあり、出産後しばらくは寝たきりとなってしまった。
どうなることかとやきもきしたものの、看護婦の手助けもありなんとかなった。
赤ちゃんは元気いっぱいに泣いている。
私はまっすぐに正しい道を歩いてほしいという気持ちを込めて、〝直正(なおまさ)〟と名付けた。
出産後しばらくはまともに働けなかったが、直正を連れて医師や看護婦の白衣の洗濯をするなどできることを手伝い、細々とお給料はいただけた。
それもすべて佐木さんのおかげだ。