明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
でも、これでいいのだ。私たちは被害者家族と加害者家族という、憎しみという感情はあれど、決して結ばれることはない関係なのだから。
こうして愛した彼の子がここにいるだけでありがたい。
くよくよしていても仕方ない。
「直正、今日の晩御飯なににしようか」
「お母さま、いっぱい飛んでる」
問いかけたのに彼は海の上を飛ぶかもめに目を奪われていて、それどころではないようだ。
かもめを指さし興奮気味の直正抱き上げ、私たちなりの幸せを噛みしめる。
「十分よね……」
真田家にいた頃とは比べものにならない貧しい生活だけれど、信吾さんとの大切な子がいるのだから。
あのまま清水家に嫁いでいたら、こんな幸せはなかったはずだ。
本当は……信吾さんと一緒に生きていきたかった、と頭に浮かんだ自分を戒める。
そんな弱気でどうするの?
この子を一人前にしないといけないの。
「あの鳥はかもめっていうのよ」
私は直正に話しかけながら、必死に口角を上げた。