明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

そんな平穏な生活の終焉は突然訪れた。


「真田さん、ちょっと」


朝、病院の手前で佐木さんにつかまり、物陰に連れていかれたので首を傾げる。


「どうかされましたか?」
「真田進太郎(しんたろう)というのは、君の父か?」


突然父の名を口にされ、鳥肌が立つ。
身の上話をしたことがないのに、どうしてわかったのだろう。


「……はい」


しかし、信頼している佐木さんには『違います』と嘘はつけなかった。


「真田さんに会いたいと病院に警察が来ていてね」
「警察?」


もしかして、父が私を捜している?

真田の家に帰ったら、直正はどうなるの?と焦ったのもつかの間。
佐木さんは苦い顔をして続ける。


「お父さんに、事故を起こしてけが人を救助しないまま逃げたという疑いがかかっているそうだ。しかも相手があの黒木造船の娘さんだとか」


父の事件のほう? 

ついに真実があきらかになってしまったんだ。

もしかしたら信吾さんが、父にたどり着いたのかもしれない。
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