明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
彼はわかっているのかわからないのか、曖昧にうなずいている。
緊張しながら正面玄関を入ると、吹き抜けの広い空間に気圧され足を止めた。
「どうかされましたか?」
すぐにひとりの男性が近寄ってきて尋ねる。
「真田と申します。一ノ瀬副社長にお会いしたいのですが……」
「一ノ瀬ですか。お待ちください」
その男性が去ったあとソワソワしながら直正と待っていると、スーツを着こなした背の高い男性が出てきて優しい笑顔を向けてくれた。
「真田さんですね。佐木から連絡が入っています。女工として働いてくださるとか」
「は、はい。是非お願いしたいのですが……」
彼はチラリと直正を視界に入れたあと、口を開く。
「ありがたいことに業績がうなぎのぼりで、女工が足りないんです。手伝っていただけると助かります。お子さんは何歳ですか?」
「二歳半になります。直正と申します」
「かわいい盛りですね。直正くん、よろしくね」