明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
どうやら一ノ瀬さんは子供好きらしく、人懐こい笑みを直正に向ける。
しかし恥ずかしがる直正は私の背中に隠れてしまった。
「おひとりで育てていらっしゃるとか。工場には女工のお子さんを預かって面倒を見る者がいますので、ご安心ください」
成長してきて聞き分けはよくなってきたとはいえ、まだまだ幼い。
私が仕事ばかりで不貞腐れて泣くこともよくあったが、病院では他の看護婦たちも相手になってくれたのでなんとかやってこられた。
だから直正をどうすればいいのか心配していたが、最高の環境だ。
「それはありがたいです」
「今日は工場に案内します。こちらへ」
それから、真田の家を出た日以来、初めて人力車に乗った。
無論、私の膝の上の直正は初体験で、楽しいのか手をパチパチとずっと叩き続けている。