明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
やはり、病院に来ていたのは彼だったようだ。
「父親は……おりません」
苦しくて胸が張り裂けそうになりながら、淡々と答える。
できるだけ感情をあらわにしないようにと気をつけて。
「そう、か」
もっと追及が来ると思ったのに、納得したような返事をされた。
「名前は?」
「直正、です……」
「直正か」
直正は自分の名前を呼ばれると、一層私に引っついてきて離れない。
知らない人と意思の疎通が自由自在にできるほど口は達者ではないが、話はすべてわかっているので恐怖に包まれているのだろう。
「直正、なにもせぬ。怖がらなくていい」
信吾さんがそう諭すと、ようやく私の背中から離れた。
「ゆっくり話がしたい。今、どこに住んでいる?」
話なんてできない。
彼とこうして顔を合わせていると、愛おしいという想いと贖罪の気持ちとが入り混じった複雑な感情で胸が苦しい。
「事件のことでしょうか?」
しかしそれならば応じなければ。