明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「いや。お前は知らないのではないのか?」
彼の妹さんを見捨てたのが父だという事実以外はなにも知らない。
そのとき誰が馬車を操っていたのかも、隠ぺい工作に走った使用人が誰なのかも。
小さくうなずくと、彼は私をまっすぐに見つめたまま口を開く。
「お前がどうして縁談を破談にして逃げたのか。姿を消してからどうしていたのかを知りたい。いや、逃げた理由はおそらくわかったが」
直正が自分の子だと言いたげだ。
「黒木さんが知る必要なんてありません。償えるのなら、私にできることはなんでもいたします。でもそれ以外は勘弁してください。失礼します」
直正の手を引き彼の前から立ち去ろうとしたのに、腕を強く引かれて止められた。
本当はこうして触れられるだけで泣きそうになるくらいうれしいのに。
私と信吾さんの間には、決して打ち破ることのできない壁がある。
「なんでもするのか?」
「……はい」