明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「それなら、お前の家に連れていけ。今、どんな生活をしているのだ?」
彼は工場の仕事で荒れてしまった私の手をつかみ、無意識なのか優しく撫でる。
すると途端に心臓が大きな音を立てて暴れだした。
どうしてこんなことをするの?
「でも……」
「なんでもすると言ったじゃないか。拒否は許さん」
強くたしなめられ、渋々うなずいた。
住まいの長屋に案内すると、信吾さんは少し驚いたような表情を浮かべる。
「まさか、子爵令嬢がこのようなところで……」
「私はもう華族ではございません。狭いところで申し訳ございませんが、お茶を……」
借りている家は四畳半の部屋がふたつと台所があるだけ。
まったく使われていない部屋がいくつもあった真田家とは違う。
でも、直正とふたりならこれで不自由しない。
いろいろあって疲れたのか、直正はすぐに眠ってしまった。
私は彼を奥の部屋に寝かしたあと、信吾さんにお茶を出した。