明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
こんなことになるのなら、出会わないほうがよかった……。
そう思いもしたが、彼とのあのひと晩がなければ直正は産まれなかった。
だから出会ったことを否定すべきではないと考え直した。
それから信吾さんは、すぐに帰っていった。
一緒にいた部下らしき人の前でサーベルを突きつけ、『ここは私が対処する』と言い放った彼だったが、特に事情聴取をされたわけでもない。
ただ、怒りをぶつけられただけ。
信吾さんは警察官として私に対峙したわけではなく、歩けなくなったという妹さんの家族としてここに来たのだろう。
いや、でも……。
それより、直正のことを知りたがっていた?
『今、どんな生活をしているのだ?』と私に問い粗末な家屋に驚愕していた彼は、もしかして私たちのことを案じてくれている?
「馬鹿ね……」
そんなわけがないのに、優しかった彼のことを思い出してありえない期待をしてしまった。
「直正。お前のことは必ず守るからね」