明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
驚いたことに、彼は立派な馬車を準備してくれていた。
おそらくもっと荷物があると思っていたからだろう。
馬車で隣に座った信吾さんは、まだ緊張が解けない私の腕の中の直正をチラッと視界に入れる。
「直正は食べられないものはあるのか?」
「えっ? まだ食は細いですが、大体大人と同じものを食します」
「そうか。それならよかった」
なにがよかったのだろう。
わからなかったが、彼とどんな会話をしたらいいのかわからず黙っておいた。
それから十五分ほど走ったところで馬車は止まった。
促されて降りると、目の前に立派な洋風のレストランがある。
「黒木さん、ここは……?」
「まともに食っていないのではないか? ここのビーフシチューがうまい。直正も気に入るといいんだが」
私たちに食べさせるために?
「いえ、もったいないです」
「口ごたえは許さないと言ったはずだ。俺が食いたいから付き合え」