明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
信吾さんは強引に私たちを中へと入れたが、私は唖然としていた。
『口ごたえは許さない』と言うけれど、貧しい生活をおくる私たちを思ってのことに違いない。
離れる前の優しさをそのまま感じて視界がにじむ。
「八重、なにをしている。座りなさい。お前はテーブルマナーを心得ているな。直正はこれから覚えるといい」
これほど格式高いレストランには似つかわしくないみすぼらしい着物でよいのかと心配だったものの、信吾さんは気にする様子もない。
私が窓際の席に直正と並んで座り、信吾さんは私の対面に腰を下ろした。
そしてそのあと、ビーフシチューの注文を出している
直正はこんなところは初めてでだからか、気もそぞろに辺りを見回し始めた。
「口元が八重に似ているな」
「は、はい。よく言われます」
目元は信吾さんにそっくりだ。
けれども、当然そんなことは言えない。
「直正、好き嫌いせずなんでも食べなさい。大きくなって、母を守れる男になりなさい」