明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
こんな光景を見られるとは思っていなかったので、感無量だった。
食事が終わると、再び馬車に乗り来た道を少し戻った。
そして今まで住んでいた長屋とはまるで違う、大きな平屋の前で停まったので目を瞠る。
まさか、引っ越し先というのはここ?
「降りなさい。直正、今日からここがお前の家だ」
直正はそう言われてもきょとんとして反応が薄い。
無理もない。
私も腰が抜けそうなほど驚いているのだから。
「こんな立派なところ……」
「黒木家の持ち物だ。だが使っていないので、賃料はいい」
「そんなわけにはいきません」
「だが、お前の給金では足りないぞ?」
平然とした顔で言い放つ彼は、そそくさと足を速め、玄関に入ってしまった。
「お母さま」
ずっと黙っていた直正が目を輝かせて私の手を引く。
気に入ったらしい。
玄関を上がった東側の南向きの部屋に足を踏み入れると、十二畳もある居間のようだ。