明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「信吾さん……」
こっそり名前を呼んで、彼に抱きしめられた温もりを思い出す。
傷ついた妹さんに申し訳ないという気持ちはもちろんあるが、心がどうしても信吾さんを求めてしまう。
だって、こんなに近くにいたら……。
横須賀では、信吾さんとの間に授かった神様からの贈り物である直正を決して不幸にしまいと必死に踏ん張ってきた。
直正には私しかいないと。
信吾さんに会いたくて、もう一度『八重』と呼んでほしくてたまらず、毎日のように顔を思い浮かべてはいたけれど、もう会えない人だとあきらめていたのに。
すやすやと眠る直正の寝顔を見つめながら、銀座で出会ったときのことを思い出す。
「だめだ」
どれだけ彼に恋い焦がれても、私は憎しみの対象なのだ。
それを忘れてはいけない。
暴走しそうになる自分の気持ちに釘をさし、ゆっくり瞼を下ろした。