明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

翌朝目覚めると、もう信吾さんの姿はなかった。

しかし、居間の机の上に五十圓ものお金が置いてある。

彼は警部ではあるが、おそらく月給より多い。
もしかしたら、もっと昇進しているのかもしれないけれど……。


「こんな大金……」


そのお金の横に置き手紙があり、私はそれを手にした。


【明後日にまた来る。夕飯はここで食べる】


これで食材を買えということだろうか。

仇の娘の私にここまでしてくれるのが不思議でたまらなかったが、信吾さんとまた会えるという事実に密かに胸を躍らせていた。



津田紡績の仕事は少しずつ慣れてきた。

決して楽とは言い難く、信吾さんに撫でられた指先は真田家にいた頃の面影もないほど荒れてしまっている。

けれども、他の紡績工場での女工の扱いはひどいものらしく、他社から流れてきた仲間は「ここはいい」と繰り返している。

なにより、直正を育てながらこうして働けることに感謝せずにはいられない。
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