明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「本当ですか? ありがとうございます」
目の奥が熱くなる。
直正を授かり、それからは苦労続きだった。
しかし、出会った人たちがいい人ばかりで助けられている。
「これからもよろしく」
「こちらこそ」
もう一度頭を下げると、一ノ瀬さんは社長のところに戻っていった。
翌日の晩。
西の空に太陽が沈んだ頃、信吾さんが帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
玄関で出迎えたが、これではまるで夫婦のようだと勝手に頬を赤らめる。
「直正は起きているようだな」
「はい。今日は昼寝をたっぷりしましたので元気です。うるさければ、別室に」
居間で呑気に歌を歌っている直正が迷惑ではないかと声をかけたのに、「なかなかうまい」と口元を緩めるので、目を瞠る。
ずっとひとりで過ごしてきたはずのこの家に、私たちがいては邪魔ではないかという懸念もあったので、安堵した。
「直正、土産だ」
居間に入っていった信吾さんは、手に提げていた袋を差し出す。