明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
まさか直正のためにこんなことをしてくれるとは驚愕だった。
しかも、その袋に見覚えがあり、途端に拍動が勢いを増す。
「母と一緒に食え」
信吾さんが手渡したのは、銀座千歳の和菓子だった。
出会った日、暴漢に襲われそうになって落としてしまったあの。
私の好きなものをまだ覚えていてくれたのだ。
些細なことかもしれないが、胸いっぱいに喜びが広がる。
「おじさま、ありがとう!」
直正はニコニコ顔でお礼を口にしたが、信吾さんを『おじさま』と呼ぶ。
この子にはなんの罪もないのに『お父さま』と呼ばせてやれないのはつらい。
最初こそ信吾さんのことを恐れていたが、ビーフシチューを食べさせてくれたり、先日私が風呂に入っている間は一緒に遊んでくれたりしたらしく、もう怖い人ではなくなっている。
「おじさまは失礼よ。黒木さんです」
直正をたしなめたが、信吾さんは「なんと呼んでも構わない」とどこ吹く風。