明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
しかし真田の父の前なら間違いなく折檻される、と考える。
華族として育った信吾さんも不愉快ではないかとハラハラした。
「八重の分は?」
「私はもったいないです。お預かりしたお金もどうしていいかわからないので残りはお返しします」
私の分まで買うのははばかられ、茄子の煮びたしと豆腐だけを並べていた。
「まったく。だからそんなに細いんだ」
呆れ声を出す信吾さんは、自分の皿から一尾の鰯を箸でつまむと、私のご飯の上にのせる。
「いえっ……」
「食え。命令だ」
信吾さんは威圧的に言うけれど、彼の命令はいつも優しい。
「ありがとうございます。いただきます」
素直に箸を伸ばすと、彼は満足そうな顔をして再び直正に視線を移した。
その様子が、父が子をいつくしんでいるようにしか見えず、動揺が走る。
こうして三人で暮らしていけたら――。
真田の家にいたときのような贅沢なんていらない。
ただ、三人で……。