明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
意外な返事に素直にうなずいて任せることにした。
直正は時折通る電車に目が釘づけだ。
信吾さんが次に足を踏み入れたのは呉服店。
ここは真田家も利用していた老舗だ。
外出時は洋服ばかりの信吾さんだが、浴衣でも求めるのかな?と見ていると、女性ものの着物を出すように告げるので、ひどく驚く。
もしかして私の?
ううん。彼にはきっとそれを差し上げるような女性がいるんだわ。
そう思い直して気分が沈む。
しかし、店員がいくつか着物を広げると「どれがいい?」と私に振るので、落ちていた気持ちが一気に上昇した。
「私、ですか?」
「他に誰がいる。あぁ、直正のものも見繕おう」
子供用の着物まで出すように指示をする信吾さんを慌てて止める。
「いえっ、私たちは今あるもので十分です」
といっても三枚を着まわしているだけで袖口が破れかかっているものもあるけれど、着るものにまでお金が回らないのだ。
「選ばないのなら俺の好きにするぞ」