明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

私の話が聞こえているはずなのに、彼は着物を熱心に選び始めた。


そして直正にも「どれが好きだ?」と尋ね、あっという間にふたり合わせて六枚もの着物を選んで支払いを済ませてしまった。

しかも、真田の家にいた頃に纏っていたような高級品ばかりだ。


「家に届けてくれ」
「かしこまりました」


信吾さんは店員に告げ颯爽と店を出るが、戸惑いを隠せない。


「黒木さん、こんなことをしていただかなくても」
「お前たちを囲っている以上、みすぼらしい身なりをさせると俺の沽券に関わる。自分のために買ったんだ」


抱かれるとき以外はどうしても『信吾さん』と呼べない私が話しかけると、平然とした顔でそう言い放つ。


「ですが――」
「もう黙りなさい」


私の反論をぴしゃりと遮った彼は、再び直正を抱いて歩き始めた。


それからは、直正に西洋菓子のビスケットまで購入してくれた。

直正は初めてのビスケットに大興奮。
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