明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
家まで到底待てない様子に気づいた信吾さんは、近くの公園に行き、その袋を開ける。
「申し訳ありません」
「ビスケットは初めてだったか。おいしければまた買ってやろう」
これほど気を使ってもらい、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
直正は袋からビスケットを一枚取り出すと、なにを思ったのか信吾さんに手渡し、そのあとは私にも。
「これは直正が食えばいいぞ」と信吾さんが伝えたものの、直正は受け取らず、自分の分も取り出して口に入れた。
「一緒に食いたいのか?」
信吾さんが尋ねたのにも関わらず、直正はビスケットに夢中で返事もしない。
初めて食べた西洋菓子のおいしさに目を輝かせている。
すると信吾さんは、一瞬頬を緩めて直正の頭を撫でたあと、自分も口に運んだ。
なんだか、親子三人で散歩に来たみたいだ。
そんなことをふと考えると、視界がにじんでくる。
けれど泣くわけにはいかず、私もビスケットを口に入れた。