明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

罰のはずなのにたまらなく幸せな時間を過ごしたあと、直正の眠る部屋に戻ろうとする。

しかし今日は、うしろから抱き寄せられて止められた。
「八重」と耳元で囁かれ体がビクンと反応する。


「まだ行かせたくない」


それはどういう意味?

大きく跳ねる心臓に気づきながら、彼の腕をつかむ。


「すまない。なんでもない」


しかし次の瞬間腕の力を緩めて離れていった信吾さんは、私に背を向けた。



そんな生活があっという間に三カ月過ぎ、冷たい北風が吹く季節となった。

最近、信吾さんにあつらえてもらった着物を纏うこともあるせいか、女工仲間にいい男(ひと)ができたと噂を立てられ、うらやましいと揶揄されている。

けれども、信吾さんの憎しみの対象であることは、おそらくこれからも変わらない。


父は裁判が進んでいるようだが、刑罰が決定したからといって妹さんが歩けるようになることはないのだから。
< 164 / 284 >

この作品をシェア

pagetop