明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
座らせて離れようとしたのに、抱きしめられて動けなくなった。
「なにかあったんですか?」
仕事が大変だったのだろうか。
彼の左腕には刃物で切られた痕がある。
これは職務中に暴漢と対峙したときにできた傷だという。
常に気を張り詰めていなければならない警察官の仕事は、おそらく想像を絶するほど過酷だ。
今日もなにかあったのかもしれないと、心配でたまらない。
「八重」
彼は答えをくれることなく、ただ私の名を口にしていっそう腕の力を強める。
「どうしてなんだ……。どうして俺たちは……」
「えっ……」
その続きはなに?
口を閉ざしてしまった彼の様子が気になって顔が見たいのに、離してくれない。
「黒木さん?」
「信吾と呼んでくれ。頼む」
懇願され、胸がざわざわと音を立てる。
どうしてかわからないけれど、彼が苦しんでいることだけは伝わってくる。