明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
そもそも私たちの間にあるのは憎しみという感情だけ。
彼は私の体を欲しいままにして、苦しみを紛らわせていたんだ。と何度も思おうとしたが、私も直正と同様、彼の愛情を感じてしまっていたので、そんなふうに割り切れない。
自分は誘拐犯になっても、私を守ろうとしたほどのあふれんばかりの優しさを持つ信吾さんの面影は、まだ健在だ。
ただ、言葉が冷酷なだけ。
信吾さんを恋しがる直正を抱き、夜空に浮かぶ月に向かって『会いたい』と無意識に心の中で唱えていた。
それから信吾さんはまれにやって来るようにはなったが、深夜に訪れて早朝に出ていくなど、私たちと言葉を交わすこともなく消えてしまう。
特に直正は彼の姿を見ることもなく寂しがっていた。
そんな生活がひと月。
霜が降りるほど寒くなり、外の風が頬に突き刺さって痛いほどの季節を迎えた。
とはいえ、仕事には行かねばならない。
私は直正に何枚も着物を重ね着させてから工場に向かった。
しかし、向かう途中で直正の息が上がっていることに気づき、ハッとする。