明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「直正、どうかした? 体調悪いの?」
そういえば今朝は食欲がなくて、白米をおむすびにしてやったのに残していた。
食いしん坊の直正にしては珍しかった。
すぐに抱き上げると、頬が真っ赤で体が熱い。
「熱がある……」
ここのところ寒くて、感冒も流行していると耳にした。
女工も感冒で休んでいる人がいる。
拾ったのかも。
「どうしよう……」
家に戻ろうかとも思ったが、工場のほうが近い。
よい診療所がどこにあるのか知らないので、とにかく工場へと向かった。
駆け込むと、責任者の藤原(ふじわら)さんが息を切らせる私を見て首を傾げている。
彼は以前、本社で秘書もしていたという有能な男性だ。
「どうしたんだい?」
「すみません。この子、熱があって……。今日はお休みを頂けないでしょうか?」
「それは大変だ。もちろん休んでもらっても構わないよ」
藤原さんは表情を引き締めて、小さくうなずく。
「よいお医者さまをご存じありませんか?」