明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「肺の音は悪くない。流行性の感冒だろう。今年は大流行しているんだ」
ひと通りの診察が終わり、佐木さんは小さなため息をつく。
「喉が真っ赤だ。もう少し熱が上がるかもしれないな。熱さましを飲ませたから、落ちつくといいんだけど。真田さんも移らないように、手洗いとうがいを心掛けて」
「はい。ありがとうございます」
「ちょっと、話いい?」
薬を飲んだあと、すぐに眠りについた直正に視線を送った佐木さんは、私を促して部屋を出た。
「お茶を」
「ありがとう」
居間に案内してから日本茶を用意して持っていくと、彼は縁側から庭を眺めている。
「お忙しいのに申し訳ありませんでした」
「いや。こっちの病院に新しい医療器具の勉強に来ていてね。一ノ瀬に久しぶりに会うつもりだったんだ。真田さんのことも気になっていたからね」
気にかけていてくれたなんて、本当に優しい人だ。
「そうでしたか。お茶を」
「ありがとう」