明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

たしかに、横須賀にいる時も何度も診察してもらったのに、お代をと言っても頑として受け取ってはもらえなかった。


「ありがとうございます」
「しかしこんなに立派な住まいだとは。正直、驚いたよ」
「そう、ですよね……」


横須賀で貸してもらっていた家の軽く十倍ほどの広さはある。


「直正の父親と一緒に住んでるの?」


直球の鋭い質問に、顔がこわばる。


「いえ」
「そう……。真田さんを東京に逃がしたあと、警察官と話をしたんだ。ひと目でわかったよ。あの人が直正の父親だね。目元がそっくりだった」


図星をさされて目が泳ぐ。しかし『そうです』と認めるわけにはいかない。

私たちは、結ばれてはいけないのだ。

視線を落としてうつむくと、彼は続ける。


「相手が警察官だったから逃げてきたんだと納得したけど……。それよりもっと大きな問題があったんだね」


その口ぶりでは、信吾さんが黒木家の人間だと気づいたのだろう。
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