明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「名前を聞いて驚いたよ。黒木造船の長男だったとは。事件を知らずに恋をしたんだろう?」
佐木さんは確信を持ったような聞き方をしてくるが、首を縦には振れない。
「直正は私の子です。黒木さんは関係ありません」
泣きそうになりながら声を振り絞った。
「真田さんはなにも悪くない」
優しい言葉をかけられ、涙腺が緩みそうになる。
でも泣いたら直正が信吾さんの子だと認めるようなものだとこらえた。
「この家は、黒木さんの持ち物だね」
調べればわかることなのでうなずいた。
「一ノ瀬が、工場の近くで真田さんが警察官に囲まれていたと小耳に挟んだと言っていたが、黒木さん?」
「……そう、です」
「それで、この家を? 復縁したの?」
「復縁などしていません。黒木さんは私を憎んでいらっしゃいます。父のしたことを思えば当然です」
胸が苦しくて一気にまくしたてた。
「それならどうして別邸に囲ったりしているの? ……まさか、慰みものに――」
「違います」