明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

「もし直正が黒木さんの子だったとしても、君たちは一緒にはなれない。それなら、直正が幸せになれる道を探さないか」
「直正が……」


もちろんそれを最優先に考えてきたつもりだった。

けれど、信吾さんと一緒にいられることこそが幸せで、他の道なんて考えられない。
直正も彼になついているからだ。


「横須賀に帰ってこないか?」
「えっ……」


唐突に思いがけない提案をされて、思考が停止する。


「横須賀にいるときも、真田さんがずっと直正の父親のことを想っていることはわかっていた。なにか事情はあれど、深く愛しているんだと。舌を噛み切って貞操を守ろうとしたくらいだしね」


佐木さんは困った顔をして続ける。


「華族として贅沢な暮らしをしてきたはずの君が、汗水たらして文句ひとつ言うことなく必死に働いている姿を見たら、心も動くよ。直正のために身を粉にして……。助けたいと思うのが普通だろ?」
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