明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「佐木さんにはもう十分すぎるほど助けていただきました」
これ以上頼るわけにはいかない。
「それは俺も同じ。妻を助けられなかった絶望で飲んだくれてひどい生活をしていたのに、真田さんに出会って目が覚めた。こんな堕落した生活を送っていて、天国の妻がうれしいはずがないと。だから真田さんは俺を救ってくれた恩人なんだよ」
「まさか……」
驚愕のあまり目を見開くと、彼は私をまっすぐに見つめる。
「真田さんと直正と触れ合っているうちに、情が湧いたんだ。だからふたりがいなくなったあとは心にぽっかり穴が開いたようになってしまって、看護婦たちにも『心ここにあらずですね』と言われるほどで……」
佐木さんが私たちのことをそんなふうに思ってくれていたとは。
「もう黒木さんのことは忘れて、また横須賀で穏やかに暮らさないか? 俺も看護婦たちもふたりを歓迎するよ。生活が苦しいのなら、俺が面倒見たっていい。放っておけないんだ、真田さんと直正のこと」