明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
彼は少し冷めたお茶を一気に喉に送ってから立ち上がった。
「熱さましを置いておくから、あまりに高熱で苦しそうなときは飲ませて」
「本当にありがとうございました」
「どういたしまして」
佐木さんは呆然としている私の返事を急かすことなく去っていった。
玄関を出て彼が乗った人力車が小さくなっていく様子を見ながら、頭の中を整理しようとしてもうまくいかない。
『君たちは幸せにはなれない』という言葉が耳に残って離れてくれない。
わかっていたことなのに、指摘されると苦しくてたまらない。
「直正……」
ハッと我に返って家の中に入ったが、混乱は収まらなかった。
直正の高熱はそれから三日続いた。
工場の仕事を休み、付きっきりで看病していたものの、最初の二日はゆでだこのように顔を赤くして唸っていたので心配でたまらなかった。
しかし、三日目の夜にようやく下がり始めて、安堵の胸を撫で下ろした。