明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「あんまりおいしくない」
「あはは。八重は料理がうまいからな。少し我慢しろ」
なんて失礼なことを言っているの?と焦ったものの、信吾さんは怒る様子もなく笑い飛ばしている。
居間に行こうと思ったけれど、関節が痛くて起き上がるのもつらい。
直正の風邪をもらって病に伏したことがなかったわけではないが、これほどひどくしのは初めてだった。
信吾さんがいてくれて、本当に心強い。
「直正。今日はどうしても夜に仕事に行かねばらない。八重を頼めるか?」
「うん!」
「ははっ、頼もしい。でもわかっているのか?」
そんな声まで聞こえてくる。
直正は適当に返事をしているとしか思えなかったものの、ふたりの会話にほっこりした。
それからうとうとしたり目を覚ましたりを繰り返しているうちに、空が茜色に染まっていた。
幾分か熱が下がり、体の痛みも消失している。
居間に顔を出すと、直正が寝転がって汽船の玩具を手にしていた。