明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「汽船の玩具、ありがとうございます」
「お礼なんていらない。我が子に買い与えただけだぞ」
彼の口から『我が子』という言葉が聞けて、胸にじわりと喜びが広がる。
授かったことを知らせもせずに産んだけれど、直正の存在を喜んでくれているのがうれしかった。
「少し下がってきたな」
彼はまた額に額を合わせて熱を確認する。
何度も何度も体を重ねた仲なのに、たったこれだけで体がカーッと火照りだす。
余計に熱が上がってしまいそうだ。
「……はい」
「朝には勤務があける。できるだけ早く帰ってくる」
私の髪を撫でながら口角を上げる彼は、その手を頬に滑らせた。
「たった数時間離れるだけで寂しいな。仕事に戻りたくない」
そんな甘い言葉になんと返したらいいのかわからない。
けれど、私も同じ気持ちだ。
たとえ憎まれていてもそばにいたいと願った彼が、こんなに近い。
「行ってくる」
「はい。行ってらっしゃい」
私の額に口づけをした彼は、直正の寝顔を眺めてから出ていった。