明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「お母さま、食べないの?」
「食べますよ」
箸が止まっていたのを直正に指摘された。
すると信吾さんが泣きそうな私に気がつき、そっと手を握ってくれる。
その手から『ずっと一緒だ』という言葉が聞こえてきそうで、笑顔を作った。
その日は大事をとってもう一日仕事を休み、体を休めていた
信吾さんは休暇が取れたらしく直正と一緒に遊んでくれている。
ずっと家にこもっていた直正が外に出たいと駄々をこねると「病み上がりだから少しだけ」と約束して散歩にまで連れ出してくれた。
おかげで心置きなく布団の中で過ごせる。
一時間ほどして戻ってきた直正の手には可憐なスイセンの花が握られていた。
「お母さま、はい」
「私に? ありがとう」
「お見舞いと、大好きの気持ちだそうだ。優しい子に育っているな」
信吾さんが表情を緩めながら付け足す。
直正にはしなくていい苦労もかけただろうに、大好きの気持ちをもらえて感慨深い。
彼を授かって本当によかった。