明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

その晩、直正を寝かしつけてくれた信吾さんは、私が休む部屋までやってきた。


「八重。体調はどう?」
「もうすっかりよくなりました。本当にありがとうございました」


起き上がりお礼を言うと、彼は私の首筋に手を伸ばしてきて触れる。


「もう熱くない」
「はい」


触れられるだけで照れてしまい、うつむき加減になる。


「八重。俺……。妹を見捨てた犯人が許せなくて警察官になったんだ。捜査を重ねて八重の父にたどり着いたとき驚愕した。そしてお前が俺の前から姿を消したわけを理解した」

「ごめんなさい。父の犯した罪を知ったとき、お伝えすべきでした。でも、どうしてもできなくて……」


胸の内を告白すると、彼は小さくうなずいている。


「八重の気持ちは痛いほどわかる。俺が同じ立場でも告発できないだろう。でもまさか自分の手で真実を暴いてしまうとは……。妹のことは不憫で、代わってやりたいと思うほどだ。しかし勝手なことを言えば、知りたくない事実だった」
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