明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

「八重はなにひとつとして悪いことはしていない。でも、妹を傷つけられたという怒りをどこにぶつけていいのかわからず、罪のないお前たち家族を恨むことで紛らわそうとした」


そうなって然るべきだ。彼もなにも悪くない。


「横須賀でお前を逃がしてしまったとき、会えなかったという落胆とともに、少しホッとしたような気持もあった。会って憎悪の目を向けなければならないのなら、会わないほうがいいのかもしれないと。でも、子供がいると知って……」


横須賀で直正の存在を知ったのか。
そのときから自分の子かもしれないという予感があったのだろう。


「津田紡績で働いていることを突き止めて、仕事として八重に会いに行った。サーベルを抜いたのは、自分の暴走しそうになる気持ちを抑えるためだった。憎しみより愛を囁いてしまいそうな気持ちを」


彼の苦しい胸の内がひしひしと伝わってくる。
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