明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

その日、信吾さんが帰ってきたのは深夜になってから。
直正は随分前に眠りに落ちている。


「お疲れさまでした。お忙しいんですね」
「いや……」


彼から背広を預かりながら問いかけたが、歯切れが悪い。


「お食事はされてきたんですか?」
「なにかある? あまり食べてないんだ」
「今、準備します」


もしかしたらと用意してあったので、それを居間に運んだ。


「いただきます」


直正の寝顔を見に行っていた彼は、手を合わせてから食べ始めた。

最初に渡されたお金があるので、信吾さんがいるときは肉や魚も献立に入れられる。
今日はさわらの味噌漬けだ。

そのおかげなのかそういう時期なのか、直正の成長が著しい。


「うん、うまい」


かなりの勢いで食べ進んでいるが、あまり食べていないのではなく、まったく食べていないのでは?


「食事をとる暇もないんですか?」


そばに座りお茶を淹れながら何気なく尋ねたところ、彼の箸が止まったので首を傾げる。
< 209 / 284 >

この作品をシェア

pagetop