明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
お父さまは怒号とともに立ち上がり、目の前の茶碗を手にしてまだ熱いお茶を私にかけようとした。
覚悟して目を閉じたものの熱くない。
再び目を開くと、私の前に立ちふさがった信吾さんの背中があり目を見開く。
私をかばってお茶を被ったのだ。
「信吾さん!」
「大丈夫だ」
信吾さんは一瞬私のほうを振り返り笑顔を見せたあと、再びお父さまと対峙する。
「たしかに真田家の娘ですが、彼女にはなんの非もありません」
「バカな。お前はとよの無念を晴らすために警察官になったのではないのか? とよのことをかわいがっていたお前が、一番憎むべき相手ではないのか!?」
お付きの人がオロオロし、お父さまをなだめるのもためらうほどの権幕だ。
「八重の父のことは、一生恨みます。あのとき、逮捕などせずこの手で殺してやりたいと思った……」
苦しげに吐き出す信吾さんのうしろ姿を見ているだけで、瞳が潤んでくる。