明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
直正にこんな修羅場を見せるわけにはいかない。
彼はまだ信吾さんが実父だと知らないのだ。
私は頭を下げて部屋を出ると、駆け寄ってきた直正を抱き上げて奥の部屋に戻った。
「黒木さん、怒られてるの? 僕がいい人だよって教えてあげるよ」
「そうじゃないのよ。ありがとうね」
内容はわからなかったかもしれないが、怒号は聞こえていたのだろう。
直正は信吾さんのように優しく、そしてまっすぐ育っている。
この子を守らなくては。
私は直正を強く抱きしめ、心の中で誓った。
それから十五分ほどは押し問答している声が聞こえてきたが、玄関の引き戸が開く音がしてパタリと収まった。
帰ったようだ。
呆然と玄関のほうを見つめていると、ふすまが開いて信吾さんが顔を出した。
「直正、うるさくしてごめんな」
「怒られちゃった?」
「あはは。大丈夫だ。八重、風呂を入れてくれないか。直正、冷えたから一緒に入ろう」
「本当に!?」