明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
ずっと考えていたことを告白すると、彼は小さく首を振り、手を握ってくる。
「俺は、八重と直正と家族になりたい」
「信吾さん……」
私も同じ気持ちだ。
けれど、難しいことも理解している。
「それに、もし今回の縁談を破談にできても、八重と結婚しなければ別の誰かをあてがわれるだけだ。必ず、八重と直正と幸せになる」
信吾さんははっきりと言いきり、近寄ってきて抱きしめる。
何度も優しく頭を撫でられると、張り詰めていた心が緩んでいく。
彼といつまでもこうしていたい。
どちらかが命尽きるその日まで、手をつないでいたい。
それからも信吾さんは、実家に足を運んでは説得を試みてくれているようだったが、いい返事はない。
しかし直正の前ではいつも笑顔で、家の中は明るかった。
「そうか。工場の友達と仲がいいんだな」
夕飯のとき、津田紡績の女工仲間の子たちと遊んだ話を盛んにする直正は、信吾さんと出会ってからぐんと口が達者になった。