明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

今までは直正を育てることで精いっぱいだったが、一番手のかかる時期は越えたし、なにより信吾さんがいてくれるので心にゆとりが生まれている。

今なら少しは支えになれるかもしれない。


母の実家は甲武鉄道の走る武蔵野(むさしの)村にある。境(さかい)駅で電車を降り、それからは徒歩。

直正と手をつなぎゆっくりと歩くと、何度か訪れたことがある母の実家が見えた。


母の父――私の祖父にあたる人は、甲武鉄道の上層部として勤務していた人で、のどかな地域に大きな一軒家が目立っている。


「あそこだよ」
「今のお家より大きいね」
「そうね」


真田家と同じくらいの規模はある。

緊張しながら玄関に立つと、庭にいた女中らしき白髪交じりの女性が気づいた。


「いらっしゃいませ。どちらさまでしょうか?」


私がわからないのも無理はない。
最後に訪れたのは、尋常小学校に通っていた頃だ。
< 227 / 284 >

この作品をシェア

pagetop