明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「あぁ、千歳の。懐かしいわ」
母も千歳の和菓子は好きだったが、こちらに来てからは食べていないのかもしれない。
「直正くんも食べられるかしら?」
「はい。好物です」
「菊(きく)」
母は先ほどの女中を呼び、お茶の準備をさせた。
菊さんが和菓子を皿にのせて持ってきてくれたが、なにやら封筒も手にしている。
「奥さま、こちらが入っておりました」
「なにかしら?」
母は受け取り、私たちにお茶を勧めてから広げている。
手紙のようだ。
和菓子は信吾さんに用意してもらった風呂敷のまま持参したが、私もそのようなものが忍ばせてあるとは知らなかった。
「まあ……」
母はそれら目を通し、うっすらと涙を浮かべている。
一体どうしたのだろう。
しかし、一旦それを置き、和菓子を口にした。
直正が食べ終わったのを見た母は、再び菊さんを呼んでいる。
「直正くん、お庭に梅の花が咲いているの。菊とお散歩してこない?」
「うん」