明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「でも、嫌ですと申し上げたわ。お帰りをお待ちしておりますと。やつれた様子だったけど、自分の犯した罪を深く反省しておられた。あの人のしたことは決して許されないとわかっています。それでも、私はあの人を待ちたいの」
おそらく、縁を切り真田の名を捨てたほうが母は楽に生きていける。
しかし父を待つという母は、父のことを深く愛しているのかもしれない。
「そう、ですか」
「だけど、そうすると八重に負担がかかってしまうわね……」
当然私も真田のままということになる。
「お気になさらず。私たちはなにがあっても離れないという覚悟がございます」
私にとっても、真田の名は重い。
しかし、名を変えたからと言って、とよさんへの罪が軽くなるわけではない。
一生背負って懺悔し続けるつもりだ。
「八重は強いのね」
「直正が私を強くしてくれました」
障子の向こうから直正のはしゃぐ声が響いてくる。
真田家にいた頃は、清水家に嫁ぐしかないとあきらめるような弱い人間だった。
けれど、直正の存在が私を強くした。