明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
彼は私の耳元で囁き、耳朶を甘噛みしてくる。
それだけで愛されたばかりの体が再び火照りだし、真っ赤に染まっていく。
「もう散々待ったのですから、焦らず進みましょう」
「そうだな」
彼は頬を緩めて私を見つめ、熱い唇を重ねた。
しかしそののち、私は黒木家の怒りを目の当たりにすることとなる。
津田紡績での仕事を終え、直正を連れて家路につこうとすると、工場の周辺に数人の男が立っているのに気づいた。
「おぉ、来た来た。犯罪者の娘だ」
彼らのうちのひとりが大きな声で私をさげすむので、目を瞠る。
とっさに直正を背中に隠したが、誹謗の声は続いた。
「他人の人生を滅茶苦茶にしておいて、素知らぬ顔でのうのうと生きているとはねぇ。彼女の父は、ひとりの女性を歩けなくしたんですよ。皆さん、ご存じでした?」
私と同じように帰っていく女工たちに、わざと聞こえるように大声で話し続ける。