明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

ちょうど業務が終了した時間のため周辺には女工があふれていて、私たちを囲むように人だかりができてしまった。

彼らは間違いなく黒木家の回しものだ。


「ましてや今度はその家の財産まで狙って、随分したたかな女だ」


信吾さんとの結婚のことを言っているのだ。

財産を手にしたいと思ったことなど一度もないのに。

周囲のざわつきが大きくなり、私には侮蔑の視線が送られた。


「そんな人と一緒に働いているなんて怖いわね」
「恐ろしい女」


私が言い返せないからか、男たちの話を完全に信じてしまった女工たちが口々に言い合っているのが聞こえてきて、唇を噛みしめる。

せめて直正を逃がしたいが、ひとりで行かせることは到底無理だった。


「お前たち、なにをしている?」


そのとき、私たちのところに割って入ってきたのは、工場責任者の藤原さんだ。


「従業員はもう帰りなさい」


彼が促すと、女工たちは蜘蛛の子を散らすように去っていった。
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